平成26年度
言語能力向上拠点校実践報告会
終了しました
平成27年1月29日(金)に公開研究会を行いました。東京都内の学校のみならず、宮崎県や石川県からの御参加や区立図書館からの御参加など多数いただきました。貴重な時間を使って御参加してくださった皆様、お忙しい時期に派遣をしてくださった学校管理職の皆様、ありがとうございました。
分科会ブース発表
各教育課程、分教室や病院訪問、学校図書館実践紹介
(A課程分科会ブース)
「社会で自ら人とつながる力を育む指導法の工夫について」をテーマに、昨年度作成した「依頼に関するコミュニケーションスキルの指導目安表」をもとにした小学部・中学部・高等部の授業実践を報告しました。パワーポイントでの写真や映像で、子供たちの様子を見ていただきました。また、パネルにて、生徒が日頃している依頼や、生徒にとったアンケート等を紹介しました。質問やパネル回覧の時間には、ご参観いただいた方から貴重なご意見をいただくことができ、今後の教育活動の励みとなりました。
(B課程分科会ブース)
平成25年度「わかりやすい教材」について、平成26年度「学習グループの授業」について分科会で取り組んできたことについて報告しました。その中で、児童・生徒は様々なつまずきがあり、教師達が集まり、多くのアイディアを共有しながら、教育方法を考えていくことが大切であることをお伝えしました。また、参観して頂いた方から、質問や意見を頂き、さらに、実際に教材を操作しながら有意義な情報交換を行うことができました。
(C課程分科会ブース)
具体的な教材とその使い方や使った児童・生徒の様子の説明と、「関わりあい遊び」の実技とそのねらいや児童の様子の説明を、多くの方々に参観していただくことができました。
また、休憩時間には、参観していただいた方々と、展示していた教材・教具について、手に取っていただきながら、ざっくばらんに有意義な意見交換をさせていただくことができました。
(かもめ分教室ブース)
かもめ分教室では、『人のやりとりを通じて自分の気持ちを表現する取り組みついて』をテーマに一人の生徒の実践を取り上げ、昨年度の担任から生徒への想い(ねらい)や働きかけるうえで大切にしてきたことを、今年度の担任から、担任が変わったところで生徒の表出がどう変化したかについて研究発表を行いました。当日は、大勢の人に来ていただき、よい発表の機会となりました。
(いるか分教室ブース)
今回の発表では、「願いから始まったいるか分教室の歴史」「いるかで育まれた子ども同士の絆」「病気になった生活をより豊かなものにするための実践」等々を報告しました。病気になった自分に向き合い、自らの言葉で率直な気持ちを表現した子どもたちの姿は、我々が教育活動の中で何を大切にすべきかを教えてくれています。ブース発表を聞いてくださった参加者にもしっかり伝わったことと思います。
(つばさ病院訪問ブース)
つばさ病院訪問では、「自己表現や伝える力を育てる取組」をテーマに児童2名について「コミュニケーションを含んだ言語や伝える力に関わる指導と成果について」事例研究を発表しました。活動写真もご覧いただき、病院内でも頑張って学習に取り組んでいる様子を知っていただく機会となりました。
(言語部ブース)
朝日新聞社の社員による出前授業「NIE」(newspaper in education)で作成した生徒達の作品を中心にブースを作り、「NIE」として平成24年度から取り組んできた内容をご覧いただけるようにしました。
図書コーナー及び、図書室で使っている春夏秋冬の装飾グッズでブースを飾り、伊藤忠記念財団よりお借りしている電子図書デイジーも手に取れるようにしました。
本校での日頃の図書環境や取組みを実際に目にできる良い機会になったと思います。
パネルディスカッション
「本校の言語能力向上の取組について
~学校図書館の活用実践と教材に視点をおいて~」
○校内の読書環境の整備 上記の内容をテーマに、パネルディスカッションを行いました。 <校内の読書環境の整備> <読み聞かせ> <新聞を使った学習> NIE(news paper in education)という取り組みで、本校では朝日新聞社の社員による出前授業を年に1回平成24年から行っています。新聞に触れて厚みや質感を感じとるところからスタートし、新聞記事の言葉を選び取り、コラージュして「言葉の貯金箱」を作ったり、気になる記事を選んで感想を書いたりする授業を行いました。 <電子図書の活用> 電子図書デイジーの活用事例として小学部で給食の配膳を待っている時間を読書時間に当てたクラスの様子が話されました。「どの子も夢中で電子図書を楽しみ、友達が見ていると横に来て一緒に読む子や、立位の練習で身体が反りやすい児童が、立位台に電子図書をつけると画面を見るために姿勢を正せたこと。電子図書で親しんだ本を、図書館の書棚から選んでくる児童がいた。」など電子図書をきっかけにした子ども達の生き生きとした様子が語られました。 <言語チャートの作成> <これからに向けて> <外部参加者からの感想アンケートより>
○読み聞かせについて
○新聞を使った学習/電子図書の活用
○言語チャートの作成
図書館を3階から1階に移し、廊下のスペースに図書コーナーを作ることで、利用しやすい場所に読書環境を設定し直しました。学校介護職員やチャレンジ雇用の方には本のカバーかけや掃除、装飾作りを協力してもらいました。装飾を行うことで季節感を感じる親しみやすい図書環境ができました。
児童・生徒も、環境作りに参加しています。作品を図書館に飾ったり、中学部では知的代替の課程で清掃や本の返却、準ずる教育課程では生徒主導でおすすめの本を紹介、高等部の職業教育では週2コマの授業で雑誌や新聞を取りに行き所定の場所に掲示したり、図書室内の清掃、本の返却、おすすめの本の紹介を各自が役割として取り組みました。本の紹介を他学部の教員や友達から「見たよ」と声をかけられたり、図書室を利用している児童生徒の姿を見ながら活動に取り組むことで、「みんなが使っている場所を自分達が整備している」という意識が育ちつつあります。
図書館整備を進めるにあたって助言を頂いてきた専修大学の野口教授からは図書館は全てのメディアに触れることができるメディアセンターとして機能することの必要性が語られました。子ども達が使いやすいことはもちろん、大人にとっても使いがっての良い図書館であるべきだという新たな視点も頂きました。
平成24年の夏季休業中に本校の教職員対象に読み聞かせのワークショップを開いて頂いた聖徳大学の有働教授より、ワークショップの感想についてお話いただきました。実際に読み聞かせをしあうワークショップでは教職員とはひと味違う自由な視点で、大胆な構図の絵本や色がきれいな絵本を選び、読み聞かせを楽しむ学校介護職員の姿が見られたとのことでした。
ワークショップを受講することで、学校介護職員からも自信をもって読み聞かせに取り組めるようになったという話がありました。
また、読み聞かせのプロとして本校で月2回程度お話会を実施して頂いている「お話の会うさぎ」の佐藤様からは児童生徒、教職員の変容についてお話がありました。
当初はお互いに慣れない状況でのスタートだったが、回を重ねるごとに教員もお話会を楽しみながら参加してくれるようになり、一体感が生まれてきたこと。子ども達のお話を聴こうとする「耳」が育ってきたというお話がありました。同じく「お話の会うさぎ」の渡辺様からも、特別支援学校でお話会をすることが初めての経験だったため、戸惑いがあったこと。その際に非常に役立った多摩図書館発行の『特別支援学校での読み聞かせ』という本のご紹介もいただきました。
このような取り組みを経て、本の貸し出し冊数が伸びたこと、保護者へのアンケート結果では子どもが本に親しむようになったという感想が増えたことも話題に挙がりました。
また、朝日新聞の「しつもんドラえもん」の取組みも紹介されました。(ドラえもんからのクイズと回答が新聞の違うページに掲載されており、質問と回答をスクラップする取組み:生徒達は自分なりに予想した答えを書き込み、教員はそれに対してコメントを添えています。)教員と生徒がスクラップノートを交換する中でコミュニケーションも育まれるという成果が出ています。
当日は朝日新聞社の講師の遊佐様も、生徒の実態や授業内容について綿密に担当教員と打ち合わせて取り組みがスタートしたことや、授業の様子についてお話しくださいました。
電子図書デイジーを提供していただいている伊藤忠記念財団の矢部様からは肢体不自由校での活用状況や、電子図書デイジーが誕生したきっかけ、ソフト「わくわく文庫」の制作についてお話いただきました。
東京都から示された「言葉による発信力を高める。」「美しい日本語を身に付ける。」という重点課題を受けて、本校では言語能力の向上を目指してきました。各教員が重点課題と照らし合わせながら、児童・生徒の言語能力・コミュニケーション力を豊かに育むために、どのような授業・指導を行い、どのような教材を使ったかを明確に表現するために言語チャートというものを作成しました。
有働教授からは、視覚的に見やすいチャートという形で作成し、図だけではなく説明も簡潔な形で入っている点をご評価いただきました。また実際に作成にあたった教員からは、授業を言語的な視点から見直す良いきっかけになったという感想が挙がりました。
今後の課題として、事業に携わってきた教員からは「読書環境の維持を組織的に今後も行うことが在校生への義務であり、言語能力向上の拠点校の指定が終わった後も自立予算を組みながら電子図書の導入の継続、メディアセンターとしての役割を果たすことが必要であるという話が出ました。また、読書活動に親しむことは放課後や卒業後の生活を豊かにすることにもつながるので、学校での読書経験をきっかけに地域の図書館にも出かけて行ってほしい。そのためにも、子ども達の様子を保護者に伝えることが大事になってくる。」という話がありました。
最後に来賓の方々、有働教授からは肉声の言葉で読み聞かせることの重要性が語られ、「お話の会うさぎ」の佐藤様からは、まずは学校図書館を子ども達が利用することで改善点を見つけ、そこで挙ったことを改善したり公共の施設にも伝えたりしながら、地域の図書館の利用へつなげていくことが必要とのお話がありました。野口教授からは学校図書館に司書を置くことも検討する必要があるとのご意見もありました。
学校側からは具体的な実践と変容が語られ、来賓の方々からは読み聞かせ、読書活動や図書館のあり方などについての熱い想いが語られ、ディスカッションを通して成果の確認と次への具体的な課題が見えてきました。
ブース発表は、短い時間で簡潔に発表していただいたので、即実践に活かせるネタをたくさん得ることができました。ただ、他のブースの声・音で聞こえないときがありました。仕切った方が良かったのでは。
若手の先生からベテランの先生まで全体で研究に「一所懸命」「楽しく」取り組めている様子をうかがえることができ、学びだけではなく今後のモチベーションにつながりました。こういった研究会により多くの人(特に他の特別支援学校の先生方)が参加しないともったいないと感じました。取り組みを広めて欲しいです。
都立の特別支援学校には、学校図書館がないところや殆ど機能していないところが多いと思います。発表を伺い、先生方が子ども一人一人に対して、丁寧に指導する為、様々な工夫をして成果を上げたことを充分に感じました。今後も言語を育む助けとなる読書や本で学ぶことなどを主軸にして欲しいと思いました。
学校司書を是非入れていただき、図書館をより充実させて、他の特別支援学校の手本となるようにしていってください。